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鷽の宿木

戦国無双シリーズ 真田幸村総愛され欲を書き散らすブログ。幸村を全方位から愛でたい。

奇病にかかったー3(就幸)

【元就は右目から真っ赤な花が咲く病気です。進行すると感情の起伏が激しくなります。人魚の鱗が薬になります。】



「わるい、ね」

苦笑と共に零れた囁きはとても淡い音だった。
雨粒のようにぽたりと幸村の胸に落ちて、熱を持ちながら染み込んでくる。
病が深くなるにつれ、元就は幸村へ、『逃がさない』とか『絶対に離さない』とか、そういった強い言葉を使うようになった。
心が自制できない、欲が曝け出されてしまうと、疲れた顔をして己を嘲った元就の目はずっと、幸村を捉えたままでいた。
穏やかで思慮深い、乱雑なところのなかった人が、どこに激しさを隠していたのだろう。
元就から掴まれた手首が軋む。皺の刻まれた指なのにぎりぎりと骨を締め付ける強さは、人としての箍が恐らく外れているのだ。
「元就殿」
呼んだ名は哀願に聴こえたか、それとも恐怖か。
慕っていたのだ。彼の人のことを。
謀神などという恐れからは程遠く柔和に微笑む、書物を愛し歴史を語る、沢山の言葉を知っている人。
膨大な知識の海から相応しい物を掬いあげて、丁寧に紡いで話してくれた、優しい――――

「君を誰にも渡したくない。二度と此処から出さない。ああ、違う、こんな風に言いたいんじゃ、いや、同じことだ。私はもう私を抑えておけない。幸村くん、幸村くん、私は、ね」

君が全て欲しいから、君を壊したいんだ。
腕を引かれきつく抱きしめられた息苦しさの中で、赤い花は鉄錆に似た匂いがした。

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