忍者ブログ

鷽の宿木

戦国無双シリーズ 真田幸村総愛され欲を書き散らすブログ。幸村を全方位から愛でたい。

奇病にかかったー9(就幸)

【幸村は額からツノのような突起が生えてくる病気です。進行するととても惚れっぽくなります。星の砂が薬になります。】

「君を手に入れる為に、あれこれと考えていたのだけれどね」
元就の暢気な声音に、鈴をつけられた猫、ではなく、真田家の次男坊だった青年は小首を傾げた。ちりんと首元の金色が揺れる。
腹の探り合いなんて面倒なことをしなくても君はとても素直だから。
言いながら伸ばされた手の平を享受して、喉を鳴らさんばかりにうっとりと撫でられる様は、愛玩されるための生き物のそれだ。
「薬も使い方を誤れば毒になる。逆も然りで、病もそうだね。君にとっては災難なばかりだろうか」
元就自らが毎朝梳いてやる髪は艶艶として指通りが良い。
此処へ来た当初は無頓着で軋むような感覚もあったが、女のようにとはいかずとも上等な触り心地になった。
自分が手入れして変えたのだという気持ちは、予想以上に満足を与えてくれた。
些細な変化が、相手を己が色に染めて手中に収める証となる。
髪を撫で梳いたあと額に滑らせた手は突起に触れる。そこに本来、あるはずのないもの。御伽草子に語られる怪物の姿を写しとった病躯。
しかし幸村は苦しみもがき血を吐くのではない。
心を開け放ち、委ねてしまうのだ。相手を問わず。
それを“惚れる”だなんて医者が言ったから、過保護な兄が守ってしまう前に元就は動いた。
誰にでも恋してしまうなら、その誰かが私一人でも構わないだろう?何人も好くよりはずっとましな筈さ。
幸村を連れてきた元就がもっともらしく平然と語った言葉に、隆景はひくりと口元を僅かに引きつらせたが、間を置いて返したのは首肯だった。賢明にして和を尊ぶ我が子は、諸々の平穏の為に早々に諦めたのだ。

「おいで、幸村くん」
広げた腕の中に直ぐ様おさまる身体はやや細くなってしまっている。
苦痛が見えずともやはり病人だ、とこんなところで解る。
「辛くないかい」
ふるりと首を横に振るのに合わせて鈴が鳴る。
「元就様がお傍に置いてくださる。満たされております。辛いなど、何故きかれるのです」
幸村は元就を喜ばせることばかり口にする。
熱っぽく滲んだ瞳は正気の光がほとんど失せて濁っていた。
また触れた額が熱い。常に発熱しているようだ。
熱さにとろかされて気持ちが良いのか、本当は苦しいと喘いでいるのか、どちらであれ、幸村は元就のものだ。その現状が全てだ。
可愛がればうんと懐いてくる。猫より小鳥より、姫君よりも愛らしい鬼。
「君に、私の国の様々な物を見せてあげたいなぁ。美しい場所が沢山あるんだ。でも、他の人に目移りされては困るから、閉じ込めておくしかないのが残念だ」
抱きしめて耳元に囁いたのは本心だった。
愛しい相手を連れ歩けない。小さな囲いの中で生かしている。
「元就様が私のせいで、心曇らせておられる」
うなだれる幸村の背中をとんとんと柔らかにたたいて元就はごく明るく返した。
「いやぁ、幸せな毎日だよ。とても」
――――残念ではあっても、心苦しくも哀しくもない。
虚構の愛を独占して、理解した上で幸せを語れてしまう歪みこそ、元就の終生患う病であったのだろう。


* * * * *

珍しくしあわせな監禁生活。監禁ネタが異常に好きなことが私の病です( ˘ω˘ )

拍手[0回]

PR