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戦国無双シリーズ 真田幸村総愛され欲を書き散らすブログ。幸村を全方位から愛でたい。
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[幸村は右目から真っ赤な花が咲く病気です。進行すると眠りにつくことができなくなります。雪解けの水が薬になります。】
眠らぬ夜は長いのだということを言ったのが幸村でなければ、良い女と居る夜は確かに長いな、とからかってやったところだ。
赤を纏い、赤を掲げ、敵も自身も赤に染まる、最早幸村の象徴として広く知れ渡ったその色の花は、宵闇に灯した薄明かりの中でてらてらと妖しく光った。
血塗りじみた生々しい赤さと質感とは裏腹に、なんとも芳しい匂いが孫市の寝ぼけまなこを優しく閉じさせようとする。
頭をふり、大あくびをすると、幸村の視線を感じた。
『お眠りになればよろしいのに』なるほど、眼差しとは言葉よりも雄弁で素直だ。
「傭兵ってのは、武士も忍も知らない夜の過ごし方に慣れてるもんだぜ」
「でも、昨日も起きておられたでしょう」
幸村が俯くと開いた花の裏側が僅かに見える。浮き出た脈の不気味さが目をそらさせようとする。
あの花を千切ったら血が出るだろうか。それは花が流す血か、幸村のものか。
らしくない空想をするのを自嘲して、今日は何を話そうか、と考える。
武家がこぞって蓄える教養を孫市は知らない。雑賀衆の間で代々語り継がれてきた教えは不出にすべきものが多く、ともすれば用向きで歩いた地で聞きかじった、他愛ない子らの噂話や、老人が聴かせてくれた伝説くらいが精々だ。
昔々あるところに、なんて出だしから真剣に聞き入る幸村は、やはり眠れぬ夜を少しでも紛らわしたいのだろう。
「眠らなくても良いって言や、昼夜問わず働けて俺達みたいな奴らには願ってもないことに思うが、眠れないとなると途端に野暮だね。ずっと起きてたんじゃ美女と迎える朝の麗しさが半減だ」
「孫市殿・・・私は平気ですから。お疲れ、でしょうに」
「おいおい。夜はこれからだぞ?いつもお伽噺じゃ艶がないから、今日は俺が出会った数多のかわいこちゃんについて教えてやるつもりでいるんだ。お前、ぜんっぜんそういう話、きかないしな。どういう子が好みなのか、これを機に言ってみろ。俺が良い子探してやるぜ」
にやにや笑みを向けると、幸村の眉が困った様に下がり、はぁと気のない返事をよこした。
孫市が得手とする方面の事柄が、どうも幸村は悉く不得手らしい。
無知、ではなく無垢と思える純粋さがそこにあって、ああ、大事にされたのだな、と解る。
次男であること、人質として生きてきたこと。性根が捩じくれて野心や妬みを抱えても可笑しくない境遇なのに、幸村は人に好かれてきた。
これでは酷く手放し難かった筈だ。
真田家の嫡男、幸村の兄のことを考えれば、先ほど浮かべた軽薄な笑みがどうしても苦笑になった。
「奥州の春は遅いな」
ぽつりと漏らした声は予想外にくたびれていて、はっとして取り繕おうかとしたものの、幸村は同じだけ潜めた静かな声で「そうですね」と答えた。唯一の薬となる雪解けの水が手に入るのはまだ先だ。
あたたかな日差しが雪深い地を照らすまで、遠い朝を数える日々。
「経験豊富な俺でも話のネタが尽きそうだ」
顎に手をあて大仰に唸ってみせた孫市へ、てっきりまた眠りを勧めるものと決めつけていた幸村は、悪戯な雰囲気で首を傾げて言った。
「そうなったら、次は私の話を聴いてくれますか」
聴き手に徹していた幸村の提案に、這ってきていた眠気がさぁっと引き、目が開くくらいには興味をそそらされた。
きっと幸村と接してきた他の人間達は、こんな風に、淡くゆっくりと惹かれていたのだ。
「いいね。刺激的なやつを頼むよ」
* * * * *
孫幸は全てが神サイト様のおかげ。孫幸同盟、実は入ってます。フフ。