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戦国無双シリーズ 真田幸村総愛され欲を書き散らすブログ。幸村を全方位から愛でたい。
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連れて行ってはいけないのだろうか。
桜が咲き誇る見飽きた場所で、果敢に向かってくる木の槍をいなしながら、信之は考える。
乱世に幕が下りたのを目にしたあの日から、この心は痛み続けている。
塞がらないまま長い長い一生を終えた筈が、目を開けば昔日に立っていた。父も母も武田もまだある過ぎ去った日の中に、その頃に沿う姿で、信之はいるのだ。
初めのうちは死の床で刹那の内に見ている夢だと断じていたが、両手の指が数え切るころには、流石に受け入れざるを得なかった。輪廻の輪から一人突き落とされたように、繰り返す己の人生を。
最も痛みを負ったあの結末は、幾度迎えようとも、やはり変わらず信之を絶望の底に叩き伏せる。
乱世の終わりを彩るのはいつも、いつも、いつも必ず、赤い背中だった。
どれほど苦心しても、兄弟の立場も別れの言葉も同じだ。
また止められなかったと嘆くごとに、ひび割れた魂からは血が流れ、ぱっくりと開いた傷口からは黒々とした虚ろが、訪れる泰平の世を恨めしく覗いている。
何度も何度もこの手を引いて、何度も何度も道を違えて、最後はいつも同じ末路に辿りつく。
信之は幾度目かの、幼い時分を過ごして思う。
どうすれば連れて行けるのだろう。
どうして別れてしまうのだろう。
どこでなにを変えれば、この手を握っていられるのか。
膨大な記憶の積み重ねを顧みながら奮っていた木刀が、相手の獲物を高く軽い音をさせて弾き飛ばす。気付けば手合わせは決していた。
鍛錬の相手を―――まだ死を見つめてはいないころの、幼い幸村を見る。
仕合は常に真剣そのもので、全力で挑むからこそ、負けることが悔しい幸村は唇を噛みしめている。
些細なことでも哀しませたくなくて、可愛がる気持ちが勝っていたから、優しさのつもりでわざと負けてはかつて言ったものだ。”お前の勝ちだ”と。
しかし『今』は違う。慈しみは既に妄執になって久しい。
いつかの日と同じ言葉をかけてやるには、信之は弟を失いすぎたのだ。
「お前の負けだ、幸村」
淡々とした声音は冷たく響く。矜持を傷つけた証に、幸村の目端には涙が滲んでいる。近寄って慰めてやりたい、と思うより、今まで繰り返してきたものと異なるその景色が希望に満ちて見えて、信之は息をするのを忘れていた。
ああ、ようやく岐路を見つけた。そうか。ここが、そうだったのか。
望んでやまなかった結末の始まりは。
柔らかに降る桜の花弁の悉くを切り捨てるように、信之は言葉の刃を振りかざす。
「―――お前は私には勝てないのだ。これからもずっと。私はお前の兄で、お前は、私の弟なのだから」
だからずっと守ってあげよう。どんな道にも連れて行こう。
幸村が泣いている。兄に敵うことなど何もないと、現実に打ちのめされている。
そうだ。それで良いのだ。これが正しい在り方だから、散る花をもう、咲かせはすまい。
「今度こそ、この兄と共に在ってくれ」
* * * * *
どれくらいコンティニューすれば信之は犬伏キャンセル出来るかなって。
兄幸、というか信之が一番ループもの似合ってる。