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鷽の宿木

戦国無双シリーズ 真田幸村総愛され欲を書き散らすブログ。幸村を全方位から愛でたい。

俺の親友が深夜徘徊で運命感じたとかぬかすから頭抱えてる

義親子だから吉継と幸村の絡みをとても期待していたのに全然なかったため義憤に駆られてこれは吉幸を応援しなければいけない流れだと強く使命を感じやらかしたけどいきなりの現パロだしやっぱりキャラ把握出来てないしゆるふわギャグになりましたなんてこった。しかもタイトルが浮かばないあまりラノベ風。
・幸村は名前しか出てない
・三成と吉継(大学生)がだらけた会話してるだけ
・吉継好きさんごめんなさい
・でも吉幸と言い張ります( 'ω' )

吉幸ふーえろ!


* * * * *



「そういえば」

コンビニから買ってきた新発売のチキンクリームパスタを、プラスチックのフォークにくるくると巻きながら吉継が切りだした。
普段は顔の半分がマスクに隠れているものの、全て見せたら世の女性たちが声を失って見惚れるほど中世的な美貌をしているのだと三成は知っている。その外見に合わせているわけではないだろうが、どうにも女子のような買い物をする親友の食事風景を、頬杖をついて何気なく見ている時のことだった。
一コマだけの講義を終えた吉継が昼食を取るため三成のマンションを訪ねてきて、食べ始めたのが10分ほど前。
そこまではいつのものことであり、非常に平和だったのだ。

チキンをフォークの先でつくつく突いては何を考えているのか分からない吉継に、こいつの食事の遅さは変わらないなとほんのり長い友情を感じながら三成は素直に聴き手になる。

「なんだ」

三成が頬杖を解いてややましな姿勢になったのを確認し、吉継は話し始めた。

「ひと月ほど前、夜中に散歩をしていたら、幸村に会ってな」

幸村、とは真田幸村という、二人の共通の友人である。
年下なのと本人が三成達を純粋に慕ってくるのとで、友人というより弟のような慈愛じみた気持ちを抱かせるが、一番矛盾の無い言い方を当てはめるなら『友人』だ。
人の好き嫌いが激しく素直になれない三成にとって、特例レベルに甘い相手であるため、幸村と名前が出ればそれだけで興味関心は飛躍的に上がる。ついでに機嫌の良さが分かりやすく声色に出ていた。

「それは珍しいな、あの幸村が夜出歩くとは・・・って、待て、また深夜徘徊していたのか。日中でさえお前の色の白さと気配の薄さは幽霊のようだというのに、職務質問をする警官の度胸試しをする気か!」

大人しそうで儚げな印象に反して、意外とアグレッシブなところもあり予測不能な不思議系要素も備えている親友の奇行を思い浮かべて三成は少々声を荒げた。
夜の散歩、といえば文学的で神秘的なイメージも湧くが、現実は顔の上半分しか露出の無いやたらと白い成人男性が、ふんふんと鼻歌を歌いつつふらりふらりと深夜の街を徘徊しているという危ない光景なのだ。
吉継が住む地域では、まっしろけっけの鼻歌幽霊の噂が子供たちが語る七不思議の定番となっている。ちなみについ最近回覧板も回ってしまった。

「残念ながら声をかけてくる剛の者はいない。それで、幸村がな」
「あ、ああそうだ幸村だ。どうしたのだ」

まだ話は始まったばかりなのを思い出し、良からぬ趣味を正すのは後回しと決め、乗り出していた身をひいて椅子に深く腰掛け直す。
吉継はその時のことを頭に浮かべているのか、冷涼な目元をそっとふせて、記憶に耽るかの如き様子になる。ぷつり、と弄んでいたチキンにフォークが刺さった。

「夜に逢っても、日の下と変わらず眩い眼差しと清涼な空気をしていて、背景の星と相まってなんとも目と心の保養だった」
「・・・幸村が好ましい奴なのは分かっているが、お前、いつの間にそんなに気に入っていたのだ。初耳だぞ」

幸村と仲が良いことを自負しており、もう一人の友と合わせてよく3人で出かけることの多い三成は、初めてきく吉継の内心が新鮮で驚く。
嫌いなタイプではなかろうと思っていたし、喋っているところも見たことがあるものの、あまり関わっているようには見えなかった。

「お前が知らないだけで結構会っているし信之公認の仲だ」
「馬鹿を言うな。あの重度のブラコン患者が認める者など、あいつの恋人くらいだろう」

穏やかで優しく、知的で思い遣りがあり、何気に文武両道で品行方正で顔も良い、ブラコンなところ以外は完璧だと女性達から褒められる幸村の兄、信之。
その人となりは認めるところだが、完璧さにブラックホール並の穴を空けているブラコンが、こじれているとかいう域を超えているのを理解しているから表情が渋くなる。
そんな信之が弟以外で唯一人特別に想い、また信之をブラコンごと好いた女性は、幸村を早々に義弟として認識し可愛がっていた。

「俺は稲殿と幸村と3人で食事したこともある」

ガン、と頭を灰皿で殴られたような衝撃を受けた。
幸村と稲との食事など、もし三成であったら不埒です!の一言で拒否されるだろうに、この親友はしれっとお許しを頂いたのか。

「・・・吉継、やけに俺の知らぬ秘密を暴露してくれるではないか」
「まぁこれを機に言ってしまおうと思って」
「夜中に偶然出会ったのがそんなに嬉しかったか」

裏切られたようなしょっぱさと、自分を差し置いて幸村と親密になっている悔しさで手がわなわな震えてきた。
生き辛い性格で仲の良い人間がごく限られている故に、衒いなく自分を慕ってくれる可愛い友と、知らぬ間に思い出を増やされていた三成の嫉妬は深かった。
美しいと評するに相応しい造作の顔が、機嫌の急降下によって恐ろしげになるのを、伊達に長い付き合いではない吉継はいたって涼しく受け流す。
刺しっぱなしのチキンをようやく口にいれ、もぐもぐと咀嚼し唇のクリームを舐めてから、フォークを置いて真面目な声で言い放った。

「運命の矢を受けたのだよ、三成」
「運命?」
「つらつらと他愛ない話をしばらく続けて、ふ、と一息ついた時、疲れたと思ったのだろうな。幸村が俺の名を気遣わしげに呼んだ。声に吊られて目線を合わせると、あれの後ろで星が流れた。その星は遠く遠くを流れたのに、俺の胸へ落ちてきたのだ」

はっきりいう。錯覚だ。
錯覚だが、その時確かに三成には、吉継の瞳の中に流れ星がきらめいたのを見た。

「・・・・・よしつぐ、おい」
「運命を感じるだろう?」
「頭を打ったか、具合が悪いのか。それとも暇だからといって借りた少女漫画でも読みふけったのか藤堂に突き返せ!」

通称手ぬぐい王子と呼ばれるやや粗暴な物言いの、三成が親しくない吉継の友を挙げて悲鳴のように叫ぶ。
どうしてあんな似合わないこと甚だしいものを藤堂が持っていたのか知らないが、与えられた暇つぶしにはとりあえず乗ってしまう吉継のことだ。
きっと叙情的で感傷的できらきらしていて胸がキュンとかドキッとかするモノローグに悪乗りしてしまったに違いない。

「いやあの漫画は元々井伊が高虎に貸していた物だから返すなら井伊に、」
「ええい埒があかぬ、もういい!幸村とのこと、結論だけ言え!まさかオチがないとは言わせぬぞ!」

三成と違い中々好かれる吉継の交友範囲すべてに突っ込みを入れる気力も最早なく、早くこの話を終わらせたくて結論を迫れば、薄く溜息をつきながら吉継は応えた。

「仕方ないな。つまりだ、幸村に運命を感じたので、姪の婿として大谷家に入らぬかと言ったのだが冗談だと思われ失敗した。天然で容易に押されるように見えて、案外流れに乗らぬ奴だ」

頭を殴る灰皿、二つ目の威力は、頭蓋を割らんばかりであった。

「めいのむこ?は、む、婿?お前、待て、お前の姪、ええとお竹だったか?あれはついこの間小学校に上がったとか聞いたばかりだぞ」
「いつの話だ。お竹はもう8歳になる」
「そうだったか・・・ではない!吉継お前何を考えて、本気か正気か気の迷いか」
「日本ではまだ同性婚は出来ない。養子とするのが定石なのだが、しかし父も母も中々是とは言わない上に、だからといって俺自身の養子にしてしまえば、義理とはいえ親子では流石に倫理観に引っかかる。というわけで、とりあえず親類にしてしまえば良いかと、な」

ただ単に三成の予想以上に幸村を気に入っていた、というだけの話だと思っていたのに、常識の枠を飛び越えて見事に危険地帯へ着地した吉継の思惑は繊細な三成の心をズタズタにし、脳を処理落ちさせた。

「・・・・・よし、よしつ、ぐ。お、おれはどうやら疲れているらしい、激しく頭痛もする。もう寝るから泊まるなら布団は自分で敷いてくれ」

考えることを放棄し、ダメージの回復に努めることにした三成のガクガク震える膝はスルーし、吉継は泊まるか否かの部分のみ拾った。

「いや、今日は帰って外堀を埋める手はずを整えよう」
「掘りを埋めるとは城攻めでもする気か」
「そう、信之は手強いからな」

すっかり冷めきってソースが固まったパスタをがすがす解しながらの、実にさりげない決意表明だった。

「ああ、お前の言葉が理解できない。思った以上に具合が悪いのだな俺は」
「流れを汲まずに先だけ急かすからそうなるのだ三成。ポカリでも買ってくるか?」
「川に落ちて文字通り流れろ吉継。海まで」



吉継は一番の理解者、昔も今もこれからも、一番の親友。そう思っていた時期が俺にもあったのだよ左近。
と、やつれた悲壮な雰囲気を背負い大学用務員に愚痴る三成の姿が、紆余曲折の後に真白幽霊と並ぶ怪談としてご近所で語られるようになるのはもう少しあとの話。

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