お試し就幸 毛利家×幸村 2014年06月07日 支部の方で先にアップしたのですが、人様の就幸小説でうっかり転げたので勢いだけでやらかしました。 全然接点ないぞこの二人・・・・・・でも腹黒昼行燈謀略ジジイ×純粋死にたがり天然武士青年おいしいです。 しかしながら元就のキャラがまー掴めない掴めない( 'ω' )3やってないからね、仕方ないね。 毛利親子×幸村とか、小十郎×幸村とか、景勝様とか高虎とか氏康とか、おなごでも甲斐ちゃん早川殿とかとかとか、総受け思考人間としてはとにかく色んなキャラと幸村のお話が見たいなと思うのです。 義父である吉継との絡みを激しく期待していたのに全然なかったのでお楽しみは5ってことですね!吉幸もください。 * * * * * 【もののふのいじ】とやらで引き結び噛み締めた唇が解けた時、この若者はどんな言葉を吐くのだろう。 馬乗りになり体重をかけた相手を見下ろして、元就は思惟に耽る。 畳にはらりと乱れ落ちた短い黒髪も、鍛え上げられた肢体も顔の造作も、間違えようも無く男だ。 しかし女の艶やかな長い髪が、柔らかな肉体が褥に横たわる様よりも、それは心の臓をじっとりと擽った。 元就は戦乱の世に生き、自ら矢を番えておきながら、己を武士だと思ったことは一度もない。 むしろ彼の者たちの思考を読んで罠にかける、智が本領の策士、立場で言えば数多の武士達を統べる家長であった。 卑怯と罵られるのが重なり続け、気付けば恐れられるまでに至った元就にとって、潔白を誇りとする武士は体よく消耗される駒としての命にも見えた。 腹の中を探るのと突き刺すのとは違う。 でも恐らくは肉を断ち血を噴き出させる刃より、口先で翻弄し頭を掻き乱す手の方が醜悪だ。 人は綺麗な物が好きだろうと思うし元就とて素直に感嘆する気持ちがあった。 だが綺麗な物よりも、形の無い物を形にしようとし、そうして出来あがった、言うなれば人の足掻きこそが好きだった。 例えば歴史。歴史そのものは時の流れや記憶だから触れぬし留めておけない。それを人は文字で記して書にし残そうとする。 綴られた字の羅列が形を得た歴史で、そんな物に似た感慨を、この若者は抱かせた。 “武士”の生き様を体現し人々の畏敬と称賛を己が身を以て成そうとしている人間。 決して折れぬと掲げた信念が時代の中で汚れていく前に散ろうとする人間。 人間を踏み外した考えだとも知らない、ひとりの愚かで純粋な子。 果たして誰が切っ掛けとなったものか、いつからなのか。 見抜いてしまった本質は元就の心を縫い付けた。裂き潰してしまいそうなほどに。 何百年と昔から。何百年と先へと繋がる歴史と同じ。 形なき物に形を与えんとする人々の願いの化身。 在るべき形を成すために終わりを定めて、誰より綺麗に死んでいく生き物。 ―――――これは己が、己こそが真の価値を理解し、愛すべき存在だ。 「いけないなぁ。もっと早く、君は私の元へ現れなければならなかった。老いぼれには時間がないのに」 縫われた糸が赤いと分かれば、あとはどうとでも動ける。どんな手段もとれる。 何故なら元就は武士ではないから。綺麗でいる必要などないから。 思いがけず見つけた物に目が眩んだが、逃がさぬよう既に掴んでいるのだ。 べったりと、腸に塗れた手で。 「さてと。じゃあ、何から君に教えようか。真田源次郎幸村君?」 とりあえずもう上田には帰れないことからかな。 ひく、と耐えていた唇が僅かに震えたのを見て取り、元就は久しく感じられなかった昂揚で胸が高鳴るのを自覚する。 老獪さが染みついた己にこんな青臭さがまだ残っていたのだと可笑しくなって、こみ上げた気持ちのままに笑みを浮かべた。 [2回]PR